▼共同研究
- 脳血管障害、緑内障の発症進展に関わる遺伝的危険因子の検索
- カテキン類の生活習慣病(粥状動脈硬化症)予防効果の検討
- 地域における中高年齢者の精神保健の向上に関する疫学研究
- 代謝症候群Metabolic syndromeの病態と予知因子の解明
- 痴呆性疾患における高次脳機能障害機序の解明
- 股関節MRI検査によるADC mapを用いた骨折予測に関する研究
- MRIを用いた足関節疾患の軟骨評価に関する研究
- 虚血性大腸炎の予後因子の検討
- 運動習慣の変化が体力および生活習慣病リスクファクターに与える影響
- 高齢者骨密度検診
- 健康食品の機能性評価・ヒト試験センターの確立
- 里山を利用した野外活動が参加者の生理・心理反応に与える効果の検証
- 天然物由来脳機能改善物質の探索
- タンデム質量分析計を用いた新しい新生児スクリーニング体制の検討
- アトピー性皮膚炎に対する還流電解水による下着類洗濯の効果の検討
▼部門別研究
- モデルラットを用いた高血圧、脳卒中遺伝子の同定
- 1)前頭部α波パルス光同調法による血中カテコラミン値の変化についての検討
2)指尖容積脈波による入眠予兆に関する実験的研究
- 脳卒中および脳血管性痴呆の発生機序に関する研究
- 慢性透析患者の心筋障害に対するARB・ACE阻害剤の効果
- モンゴル国への医療援助 −モンゴル国へ渡航しての小児心疾患に対するカテーテル診断・治療の実践
- 中高齢者のメンタルヘルスに関する地域保健活動
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島根大学産学連携センター
研究代表者 中村 守彦
1.研究テーマ:「健康食品の機能性評価・ヒト試験センターの確立」
2.研究者氏名:中村守彦(島根大学産学連携センター地域医学共同研究部門)、松田英幸(島根大学総合科学研究支援センター)、山口清次(島根大学医学部小児科)、水津拓三(株式会社アルプロン)
3.研究概要
【目的】
近年我が国では、国民の健康指向を背景に「健康食品」が氾濫しているが、その効果についてのエビデンスを科学的に証明した例は少ない。臨床試験を視野に入れた健康食品の機能性評価システムの確立は、県内外の健康食品関連企業や自治体から強く要望されている。本研究では、パン酵母由来 グルカンの高純度化と機能性を実証して、ヒト試験システムの基盤を構築する。研究成果は、隣接する島根難病研究所等と連携した「疾病予知予防研究センター」構想へ繋がり、地域産業活性化も期待される。
【方法】
1. 1,3-1,6-グルカンの精製と培養実験
乾燥パン酵母を還元下状態で自己消化させ、機能水(特許対象により明示不能)によりタンパク質、脂質等の徹底除去を試みた(国際特許申請済み)。フーリエ変換赤外分光光度計( FTIR )分析により目的の 1,3-1,6-グルカンであることを確認し、細胞培養実験により、特に免疫賦活作用を中心に機能性を評価した。マウスのマクロファージ系細胞株(Raw264.7)を精製 1,3-1,6-グルカンで4時間刺激し、培養上清中のTNF 、RANTES等のサイトカインをELISA法で測定した。エンドトキシンであるリポポリサッカリド (LPS,Escherichia coli Serotype 026:B6, Sigma)、およびパン酵母由来で基礎研究とともに医薬品としても使用されるザイモサン (Zymosan, Sigma Chemical) を対象として使用した。
2. 健康食品の機能性を評価するヒト試験システムの構築 05.8.21
上半期は企画調査研究を中心に、下半期は具体的な構想を策定すべく文部科学省が管轄する都市エリア事業計画として「疾病予知予防研究センター」の構築をめざすこととした。
【結果】
1. 1,3-1,6-グルカンの精製
医農連携および産学連携による共同研究により、世界で初めて還元下状態で 1,3-1,6-グルカンの高純度化に成功した。従来よりパン酵母の 1,3-1,6-グルカンとして認知されているザイモサンのタンパク質含有率約 5.5%に対して、本研究で精製した 1,3-1,6-グルカンは0.5%以下であった。また、フーリエ変換赤外分光光度計( FTIR )分析の結果、構造は 1,3-1,6-グルカンであり、 1,4-グルカン等の目的外のグルカンは含まれないことを確認した。通常、ザイモサンなどのパン酵母由来 1,3-1,6-グルカンは茶褐色を呈する(酸化された状態)。しかしながら、本研究により精製した 1,3-1,6-グルカンは、白色を呈する(還元状態)(図1)。無論、長期間の放置、あるいは機械的ダメージにより酸化され、茶褐色へと変質する。
2. 培養実験による生理活性の評価
マクロファージ系細胞株であるRaw264.7細胞(0.5 x 10 6 cells/well)を精製 1,3-1,6-グルカンにより刺激を加え(4時間)、培養上清中のTNF およびRANTESをサンドウィッチELISA法で測定した。精製 1,3-1,6-グルカンは濃度依存的にこれらのサイトカインを誘導し、LPSによる誘導効果と遜色のない機能性を認めた(図2および図3)。
TNF は免疫賦活に関わり、ケモカインであるRANTESは走化性因子でアレルギー反応等に関与している。さらに精製 グルカンで刺激を受けたRaw264.7細胞が一酸化窒素(NO)を産生するか否かについて検討した。 グルカン共存下で培養し、Raw264.7細胞の上澄みのnitrite量を測定したところ、濃度依存的に誘導されることを確認した(図4)。また、IFN とともに刺激を加えると相乗効果を示した。
ToLL-like recepter (TLR)-2( グルカンをリガンドとするマクロファージ細胞膜表面の受容体)に対するモノクローナル抗体による前処理により、 グルカンのサイトカイン(TNF )誘導効果が中和された(図5)。一方、TLR-4に対するモノクローナル抗体には中和効果が認められなかった。以上より、精製した 1,3-1,6-グルカンにはエンドトキシンは含まれず、 グルカンの特異的受容体であるTLR-2を介して情報が細胞内へ伝達されると結論づけた。
3. 健康食品の機能性を評価するためのヒト試験システムの構築
健康食品の効能をヒトで検証するには、医薬品開発に適応される動物実験によるGLP法に準拠した急性・慢性毒性評価と機能性の実証が求められる。現在、医薬品開発を視野に入れた開発研究を遂行中である。また、社会の強い要望に応えるためにヒト試験システムの早期構築が必要であるが、これに向け都市エリア事業を計画・立案した(図6)。本計画の基盤は、平成15年度春に旧島根医科大学が掲げた「疾病予知予防研究センター」構想である。大学統合・法人化などで凍結されていた本構想を、地方自治体(島根県、出雲市)、島根難病研究所、地元企業による産学官連携により実現しようという試みである。ヒト試験システムの構築については、本学の重点研究(健康長寿社会を構築するための医工農連携プロジェクト)として認められており、また、島根県の施策の1つである新産業創出(健康食品)とも整合性がある。パン酵母 1,3-1,6-グルカンについては、近々、大学発ベンチャーとして起業予定であり、将来は出雲エリアで初めての製薬会社へと発展するよう学内外の期待は大きい。
【考察】
科学的根拠に基づいて健康食品の機能性を証明するには、細胞培養実験、動物実験(毒性試験を含む)そしてヒト試験(医薬品ではないので治験とは呼ばない)までの一貫した評価システムを構築しなければならない。そして対象となる機能性物質の高純度化が求められる。本研究では、パン酵母から極めて困難とされた還元状態での 1,3-1,6-グルカンの精製に成功した。今後、我々は精製 1,3-1,6-グルカンの抗アレルギー作用について実証する予定である。そして長期的計画として、抗癌作用についても検討する。本邦においては、従来より溶連菌由来の 1,3-1,6-グルカン(ピシバニール)など 1,3-1,6-グルカンが医薬品として認可されている。米国ではパン酵母由来の 1,3-1,6-グルカン(ザイモサン)が医薬品として長年使用されてきた。生理活性も強く、タンパク質等の不純物が極めて少ない精製 1,3-1,6-グルカン(ピュアホワイト :商標登録済み)については、厚生労働省が認可する特定保健用食品や医薬品として利用できるよう、開発研究を続けていく。
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