島根難病研究所▼平成13年度研究事業報告集

新中医薬処方「通痺霊2」の抗リウマチ作用についてーマウスコラーゲン関節炎を用いた基礎研究


▼共同研究
  1. 健やかな長寿社会を目指した予知・予防医学に関する研究

▼部門別研究
  1. 高血圧・脳卒中遺伝子を有するコンジェニックラットの作成

  2. 脈波伝播速度におけるインスリン抵抗性の意義

  3. 新中医薬処方「通痺霊2」の抗リウマチ作用について−マウスコラーゲン関節炎を用いた基礎研究

  4. 1)遺伝相談 2)ヒトおよび実験動物における先天異常に関する研究 3)疾患における発生要因の発生工学、遺伝子工学の医学的応 用による実験的検索

  5. 鉄欠乏性貧血の原因としてのH.pylori感染と胃分泌の関係

  6. 1)伝統医学的手法によるα波の増強と免疫賦活化との関連性についての研究 2)光の前頭部照射によるα波の増強についての研究

  7. 高齢者脳機能の経年変化に与える社会的環境因子と無症候性脳血管障害の影響

  8. 非弁膜症性心房細動患者における危険予測因子としての血漿 Brain Natriuretic Peptideの有用性

  9. 若年者の骨密度測定の研究

  10. Restless Legs症候群と血清鉄との関係

  11. MRIデータを用いた脳体積自動測定による前痴呆段階アルツハ イマー病患者の検出

  12. MRIを用いたステロイド関連大腿骨頭壊死症の病態に関する研究

  13. モンゴル国への医療援助−モンゴルへ波航しての小児先天性心 疾患に対するカテーテル治療の実践

  14. 生活習慣病予防健診受診者のデータベース作成と解析
島根難病研究所 自己免疫研究部門
研究代表者 小林 裕太

1. 研究テーマ:新中医薬処方「通痺霊2」の抗リウマチ作用についてーマウスコラーゲン関節炎を用いた基礎研究

2. 研究者氏名:小林裕太、沈暁燕、趙会芳、下浦恵子、李頌華、奥西秀樹、陳紀藩

3. 研究概要
(目的) 通痺霊 (Tong-Bi-Ling)は15生薬から成る、広州中医薬大学の陳紀藩教授の新処方であり、広州中医薬大学などで慢性関節リウマチの治療に用いられ、効果 を上げている。本処方の客観的な有効性ならびにその作用機序を検討する目的でマウスコラーゲン関節炎に対する効果 を検討し、既に報告した(Li et al., 1996)。
  この処方では、日本でも用いられる古い漢方処方に新たな生薬が加えられ、多数の生薬が含まれていた。そこで、主成分と考えられる新たな生薬を中心としたより単純な処方である「通 痺霊2」が処方された。「通痺霊2」は南蛇藤、鶏血藤、馬銭子の3生薬からなり広州中医薬大学などで慢性関節リウマチの治療に用いられた臨床成績では、有用かつ副作用も少ないとされる。
 本研究では、慢性関節リウマチの疾患モデルであるマウスコラーゲン関節炎に対する、新中医薬処方「通 痺霊2(TBL2)」の有効性及びその作用機序を検討することを目的とした。

(方法) 定法によりDBA/1J雄マウスをウシII型コラーゲンで免疫して関節炎を作成した。有意な炎症が確認された初回免疫4週後より、8週間にわたってTBL2を一日一回100mg/kg体重(低用量 群)ないしは300mg/kg体重(高用量群)経口投与し、未治療群と比較した。対象治療群として、メトトレキサート(MTX)投与群を設け、週3回1mg/kg体重を経口投与した。
 病態スコアを週2回盲検法で求めた。実験終了後、ソフテックスX線写真を撮影し、関節破壊スコアを盲検法で求めた。血清抗コラーゲン抗体価は既に報告した方法で求めた(Li et al., 1996)。炎症の見られた関節の一部を固定し、病理標本の形態計測ならびに肥満細胞数の測定をおこなった。
 さらに炎症にともなう組織増殖への影響を調べる目的で、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)のうち、MMP-2, -3, -9 について免疫組織化学をおこない、炎症部位でのたんぱく発現を半定量 するとともに、Competitor を作成してCompetitiveRT-PCRをおこないそれぞれのmRNAの発現を比較した。

(結果) 未治療群では関節炎が進展し、病態スコアが上昇した(図1)。初回免疫12週後に、未治療群ではX線像より求めた関節破壊スコアの上昇(図2)が見られた。TBL2高用量 群はこれらの上昇をいずれも有意に抑制した。低用量群も病態スコアの上昇を有意に抑制したが、関節破壊スコアについては抑制傾向は見られたが、有意ではなかった。いずれにしろ用量 依存性が見られた。
 病理学的観察では、未治療群で滑膜および軟骨の破壊が見られ、これらのスコアも上昇していた(図3)。また血中抗コラーゲン抗体価の上昇(図4)が見られた。TBL2高用量 群はこれらの上昇をいずれも有意に抑制した。低用量群も血中抗コラーゲン抗体価の上昇を有意に抑制した。病理スコアも低用量 群で抑制ないしは抑制傾向が示された。また、炎症部位で肥満細胞数が増加していた。TBL2高用量 群はこれらの上昇をいずれも有意に抑制した。
 免疫組織化学で未治療群の炎症部位でのMMP-2、-3、-9の増加が観察され、これらのスコアは炎症強度と相関した。TBL2高用量 群はこれらの上昇をいずれも有意に抑制した。さらに、MMP-2、-3、-9mRNAの発現の増加もTBL2が有意に抑制した。

(考察) マウスコラーゲン関節炎では、炎症にともなう肥満細胞増加、MMPs染色性増加が観察され、慢性炎症の発現・維持におけるこれらの重要性が示唆された。TBL2はこれらの指標の増加を抑制し、モデル動物に対して治療効果 を示した。治療効果はMTXの効果に匹敵した。


4. 学会機関誌発表状況
1. Kakizoe, E., Shiota, N., Tanabe, Y., Shimoura, K., Kobayashi, Y. andOkunishi, H. : Isoform-selective upregulation of mast cell chymase inthe development of skin fibrosis in scleroderma model mice. Journal ofInvestigative Dermatology 116(1):118-123. 2001
2. 小林裕太:インターネットチュートリアル低学年向け第一回「細胞生物学」コースにおける学生の発信状況 Japanese Medical Education Today MEDC HP 2001
3. 小林裕太:「2001年度共同研究報告書」インターネット・テュトーリアルの技術開発について-初年度の試みの中での問題点 Japanese Medical EducationToday MEDC HP 2001
4. 小林裕太、福島正充、権田辰夫:喫煙及びニコチンによるパーキンソン病予防の分子機構ーコチニンNメチル化体の生成を介した喫煙によるパーキンソン病発症抑制の分子機構ー 平成13年度喫煙科学研究財団研究年報. (印刷中) 2002
5.(国際学会)Gonda, Tatsuo, Kobayashi, Yuta, Takeuchi, Takashi, Anjiki,Takashi and Ago Akio : Interaction of blood endothelium and smooth muscle inrat.-Electron microscopic observation Sixth International Congress ofVertebrate Morphology 2001 July 21-26 Jena, Germany
6.小林裕太・御船弘治・鈴木秀作:マウスの妊娠期および泌乳期における心房筋細胞のANPの役割 日本動物学会中国四国支部会報 53 5 2001
7. 小林裕太・趙会芳・奥西秀樹:ラット実験的リウマチモデルの発症における肥満細胞の役割 基礎老化研究 25 (1) p54 2001
8. 沈暁燕・小林裕太・趙 会芳・奥西秀樹:炎症部位におけるマトリックスメタロプロテアーゼ Zoological Science 18(Suppl)114 2001
9. 沈暁燕・小林裕太・趙会芳・奥西秀樹:新中医薬処方[「通痺霊2」のマウスコラーゲン関節炎に対する作用 日本薬理学雑誌119(3)p66 2002
10. 小林裕太・沈暁燕・趙会芳・白波瀬弘明・李頌華・田中徹也・奥西秀樹:コラーゲン関節炎におけるマトリックスメタロプロテアーゼ活性化に対するクロモグリカートリセチルの抑制作用 Japanese Journal of Pharmacology 88 (Suppl1) 115p 2002
11. 権田辰夫・小林裕太・竹内崇師・吾郷昭夫:カエル血管のアセチルコリンによる弛緩反応と電子顕微鏡による特徴。 Experimental Animals 51 S52 2002



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